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高気圧酸素治療
(hyperbaric oxygenation :HBO)

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社会医療法人恵愛会 大分中村病院
大分市大手町3-2-43 〒870-0022
TEL:097-536-5050
http://www.nakamura-hosp.or.jp


■指導:院長 中村太郎  ■編集:制作室 ■文章作成:2003年5月21日

高気圧酸素治療は2気圧以上の環境下で純酸素を吸入することで、平常時のおよそ14倍の酸素化能と血液中に溶解する酸素量を生命維持レベルまで増加させる特殊な酸素療法で、全身および局所性の低酸素症による種々の疾患に治療効果があり、臨床各科すべてに利用されています。基本的な奏効機序について説明します。



高い酸素分圧について


組織・細胞に必要な酸素の受け渡しは、血液によって高い所から低い所へ受け渡される拡散でのみ行われます。この酸素の拡散力は通常、動脈血の酸素分圧(PaO)に定義されます。空気呼吸の正常値はPaO:100Torr ですが高気圧酸素治療では1,433Torrにもなり、PaOが高ければ高いほど酸素化する力が強いということであり、高い酸素分圧は低酸素(血)症に対して強力な酸素化を行うことができます。


酸素吸入療法の限界


いくら酸素マスクで100%酸素を吸入しても PaO:673Torr 以上にはなりません。呼吸不全の治療に酸素を投与し PaO:673Torrあれば問題なく低酸素血症は改善されるでしょう。しかし、急性期の低酸素症や組織の急速な酸素化が目的の場合は酸素吸入療法の限界以上の強力な酸素療法が求められます。この強力で特殊な酸素療法が高気圧酸素治療です。


溶解型酸素の増加



※図をクリックすると図拡大(図1)

血液中の酸素は、ヘモグロビンに結合した結合酸素と血液の水成分に溶け込んだ溶解酸素として存在します。結合酸素量は成人男子で20vol%程で溶解酸素量はわずか0.31vol%でしかありません。この2つの酸素の合計を全酸素量として表しますが通常、酸素の供給は結合酸素に依存されるので血管障害によって血液が流れないと酸素が供給されなくなります。虚血組織の低酸素状態が長く続くと壊死や重篤な障害を起こすことになります。溶解酸素によって酸素の供給が可能になります。溶解酸素を増加させる意義と目的のイメージを図1に示しました。



浮腫・ガス圧迫による循環障害


組織の循環障害、またはガスによる圧迫によって循環障害や浮腫が起きると更に循環障害が進展し、浮腫が進行するという悪循環(連鎖)が起きます。高気圧酸素治療は組織の微小循環の改善によって浮腫が改善し、循環が改善して更に浮腫が改善します。同様にガスによる組織圧迫も気体圧縮で縮小し、ガスの洗出し効果で更に縮小、消失する良好な連鎖が期待できます。イメージを図2、3に示しました。



※図をクリックすると図拡大(図2)


※図をクリックすると図拡大(図3)


酸素の持つ薬理効果



※図をクリックすると図拡大(図4)

全酸素量の増加や組織の高酸素化によって、増加した酸素の毒性を逆利用することで放射線療法の補助や酸素の殺菌効果が期待されます。治療抵抗性の感染症や嫌気性菌の治療に応用する理由は、嫌気性菌の増殖には低い酸化還元電位を必要とするからで、酸素の殺菌効果を利用したものです。嫌気性ではない感染症にも有効である理由は、高い酸素分圧で発生し易い活性酸素の細胞障害作用を利用したものと考えられています。
高気圧酸素治療の作用機序と病態の改善を図4にまとめました。
図のように作用機序《低酸素改善効果》《物理的効果》《薬理効果》によって各種の病態に対して効果が期待できます。近年ではスポーツ外傷に対する高気圧酸素治療の有効性が注目されていますが、お話ししましたように効果の作用機序は同様です。


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